農薬は安全なのか危険なのか…

いまだに至るところで議論されていますが、近年は農薬は安全であるという主張は日本や韓国では残っているものの北欧の知り合いの農家らとも情報交換しましたが世界レベルで農薬は危険であるという認識がかなり定着しています。
よって、危険であるが故に先進国は農薬使用を後進国に委ね、現在は後進国での農薬汚染が顕著になってきました。
バラのガーデニングをされている方は、オランダが切りバラを自国で作らずにケニアやタンザニアで生産させ、強烈な自然破壊を起こした事実を知っていると思います。農薬による健康被害や自然破壊がいまだに世界中で起こっているのは事実です。

にもかかわらず、私は「家庭菜園やガーデニングでの農薬使用は許してはいけないけど、農業での農薬使用は現在の栽培技術では致し方ない」と考えています。
この、慣行農家にもオーガニック農家にも付かないあやふやな立場がどちら側とも言い争いになる原因ではあるのですが…
今回は科学的なところもすこし交えて農薬は安全か危険かを話してみようと思います。

農薬成分が環境破壊、自然や生態系を壊しているというのはこれは私はその通りだと考えています。
昔は田んぼにヘイケホタルがたくさん飛んでいました。それが昭和40年初頭から田んぼで殺虫剤が使われるようになりヘイケホタルは一気に姿を消しました。
たくさん居たドジョウも姿が無くなり、あらゆる生き物が農薬により絶滅の危機にあります。
ですから、農薬が自然や生態系を壊したのはミツバチどうこう以前に昭和40年代からずっと起こってしまっていることです。

一方、農薬成分の人間への影響はどうなのか?
これについては、厚労省が「農薬残留基準値」を設定し、農薬残留基準値以下の作物であれば人間への健康被害は起こらないと設定しています。
ならば、農家が農薬適正利用を徹底し流通での農薬残留基準値チェックを徹底すれば農薬での人間への健康被害は起こらないと考えるべきではないのか?とは言えます。

しかし…
現場では国の安全基準を信じることができない事が起こっています。これはコロナワクチンも同じで、ワクチンによる健康被害は起こらないと厚労省は言い切っているはずなのに次から次へと健康被害どころか死者まで多数出しています。
となれば、農薬の安全基準が疑われるのも当然であり、実際に農薬関連利権のいろいろな話も耳にしています。

実際、農薬は安全か危険かの論文や文献は世界レベルで腐るほど存在し、何が正解で何が間違いかの区別はまず付かないです。
科学者や研究者に尋ねたところでどちらの答えも出てきますので、答えなど存在していないと考えるべきです。
そうなれば、現在の巷で言われていることは科学的にどうのこうのということではなく、単に政治的、利権的思惑でしか言い争っていないということになります。現に、現在はTwitter上で自民党VS参政党の言い争いが多く、自民党員が群れを成してオーガニックを執拗に叩いている場面をよく見ます。
私たちは政治的思惑、利権的思惑に印象操作されることなく、事実から農薬は安全か危険かを判断していかなければいけません。

ですが、申し訳ないです。
私には農薬使用した作物が安全か危険かはわからないです。

私は農薬に携わる科学者でも研究者でも医師でもありません。ですから、農薬残留基準値内の作物が安全だ!危険だ!とは断言できません。
農薬残留基準値を超えた作物は危険です。また、農薬成分の直接暴露(農薬を直接吸ったり口から入れたり肌に付着させること)はかなり危険です。これは厚労相も農水省もそうであるとしています。
また、農薬メーカー自身も農薬の毒性をSDS(製品安全データシート)でしっかり示しています。

ちなみに、安全データシートというのは「安全です」と証明しているものではありません。治験などをおこない、それが危険であること、危険をどう回避するのかなどが記載されたものです。記載の通り、上記の農薬は人体の神経系に障害をもたらします。長期暴露では肺や腎臓にも障害が出る(恐れがある)としています。水生生物には非常に強い毒性を示すとも書いています。
よって、農薬は人体に危険であるということ、自然や生態系に悪影響を及ぼすことは間違いない事実です。
行政も農薬メーカーも栽培現場も、農薬は危険であるというのは認めていて、だからどう扱うか、どう危険回避するかなどを徹底する必要があります。これは置いておいて…

問題は、農薬使用した作物が安全か危険かということに絞ります。

私の本心は、「農薬使用した作物は農薬残留基準値内であれば安全である!」としたいのですが、国や行政が信用できるのか?となれば、まったく信用するに足りないとも答えます。
しかし、信用はできなくても受け入れなければ日本の食文化は壊れてしまいます。だから農薬は必要悪ぐらいに考えています。これは仕方ないこととして…

多くの消費者が疑問に思うのはまず2点あります
■ちゃんと農薬残留基準値チェックができているのか?
■安全基準は本当に欧米などと同等なのか?

農薬残留基準値オーバーの作物が出たりすることは実際に起きていてニュースになったりしています。チェックは抜き打ちなのでどこまでそのチェックに信頼性があるかと言えば…
私は信頼できる店で作物を買うことを強くオススメします。店独自で農薬残留チェック、品質管理チェックしているところがあります。
安全基準は本当に欧米などと同等なのかというのは、これは農薬残留基準値の世界基準はあるものの各国違います。一枚岩ではありません。また品質管理も様々です。

もっと世間レベルでも話してみます。
自動車運転免許を持っている人は交通ルールに則り違反してはいけないことはご周知の通りです。ですが、意図的に交通ルールに違反する輩も居ますしなにより現在は高齢ドライバーの交通ルール違反が増えています。
違反するつもりは無くても違反してしまうことは起こります。
農家が農薬適正利用をしなければいけないこともご周知の通りです。ですが、意図的に不適正利用する輩は居ますしなにより農家は超高齢化しています。
現場では、不適正利用するつもりは無くても不適正利用してしまっていることは起こっています。
自動車運転は免許制度があり、交通取り締まりで罰則などしっかり定められていますが、農薬には免許などの資格は存在せず、現場での取り締まりなどは一切ありません。

私個人の意見としては、農薬使用は資格制度とし、栽培現場での取り締まりや罰則の強化、農薬残留基準値の徹底チェック、品質管理表の提示義務などすべきだとは思いますが…
農業現場では超高齢化、外国人実習生が爆発的に増えているにもかかわらず、いまだに農家の性善説でされているのが農薬の現状です。

上記のことが成せた上で次に消費者の方々が不安に思うのは「農薬残留基準値内であれば安全なのか?」ということになります。
これは国や行政を信じるしかないのですが、信用に値するのかどうかは…私はぶっちゃけ信用はしてませんが(*^▽^*)

私が「農薬使用した作物は農薬残留基準値内であっても安全とは言いきれない」と考えているのは、それは農薬は人間で治験されているわけではないことにあります。
もちろん、だから農薬を使った作物は危険だと言っているわけではありません。安全か危険かわからない判断できないと言っています。

農薬の人間への安全性の試験はラットでおこなわれます。
モルモットやハツカネズミで試験をするのが悪いということではありません。医薬品でもない農薬を人間で治験できるわけもなく、それは致し方ないことです。

でも、人間に対する安全性をモルモットで示すことができるのか?

たとえば、農薬には動物の神経細胞に毒性を示す農薬成分があります。(以下は私の専門分野ではないので、詳しくは専門家まで)
昆虫は脳内に100万の神経細胞があり、人間は1000億の神経細胞があると言われています。圧倒的に数が違うので、神経細胞に毒性を示す農薬成分に暴露した場合、昆虫には死するほどの毒性を示しても人間だとかなり軽微になると考えられています。
よって、農薬残留基準値内の農薬成分暴露量であれば人間には影響ないとされています。毒性は量で決まるので、これはその通りだと私も思います。

治験で使われるモルモットの神経細胞数は2億程度です。人間に近いというよりは昆虫に近い中間ぐらいです。ちなみに、犬の神経細胞数は5億程度だそうで、猫はその半分です。
神経細胞への毒性に関して、モルモットの治験で人間への安全性は示すことができるのか?

もうひとつ、神経細胞が多いというのはいたずらに多いわけではなく、神経細胞が多ければ多いほどその伝達機能は複雑だと研究者から聞きました。複雑であるのにモルモットの治験で神経系統には影響が出ないと示すことができるのか?
これは近年、化学物資過敏症やアレルギー体質の方々が激増している事に神経毒の農薬が関与していないか?という疑問から来ています。

さらにもうひとつ、モルモットの寿命は5~7年です。ハツカネズミだと3年程度です。人間は平均で80歳以上生きます。そして、日本人の農薬暴露はまだ50年程度です。
モルモットで急性症状は観ることができても、慢性症状や蓄積は観ることができません。
現在において安全とされている農薬成分であれば、治験されて何年ぐらいでしょうか?これで平均年齢80歳の人間に農薬成分の慢性症状や蓄積が無いと言い切れるのでしょうか?

さらにさらにもうひとつ…
人間は他の生き物に比べて複雑で個体差が大きくなっています。だから農薬への影響も個人差が大きくなっています。その最たるモノがアレルギー体質や化学物質過敏症です。私たちの子供の頃には問題視されることなど無かったこの症状が、今は日本の国民病となりつつあります。
そして、個人差で農薬成分への影響が違うのであれば、その個人差の安全性をどうやって示すことができるのか?

さらに…安全性への疑問はこのような単純なことだけではありませんが、ここではこの辺でやめておきます。

これら農薬への疑問を現在まで学術側にいろいろ問い合わせてきましたが、もちろん明確な答えはありません。安全か危険かは双方いろいろな説や言い分はありますが明確な答えなど存在していません。答えは無いからいまだに言い争っているということにもなります。
もちろん、だから農薬は危険でダメとは言ってはいません。安全と過信するのが大きな間違いだとしています。農薬使用した作物が安全か危険かはわからないのに、0か100かで決めつけてはいけないと考えています。

そして消費者が不安に思う最後は「今は安全とされていても将来は危険だったとされるのでは?」ということです。
今となっては信じられないことですが、私らの子供時代は注射器を使い回しされていました。アスベストはとても優れた建築資材だったはずですが、今は…
農薬成分が将来的に「実は危険物質であった!農薬が健康阻害の原因だった!」となる可能性は決して低くはないと私も思います。実際、使われていたけど安全上使われなくなった農薬成分はいろいろあります。今後も安全上で使えなくなる農薬成分候補はいろいろあります。

よって、消費者の方々が農薬に関して不安に思うこと、懸念していることはずっと続くと思います。
でも、栽培技術側の私からすれば、現在の栽培技術では脱農薬できるほど追いついてはいないという事実も認めています。けっこう良いところまでは行ってるんですけどね…もう少し若ければなあ…

私が言えることは一つです。

消費者が選択すれば良い!

農薬が安全だと思う人は農薬を使った作物を食べれば良いし、農薬が危険だと思う人は無農薬の作物を食べれば良い。
ただ、給食や病院食、介護食などは弱い人を基準に考えるので無農薬を選択すべきだと考えています。

農薬成分の安全性を示せるのは、人間で治験し寿命まで農薬成分を摂取し続ける私ら年代をモルモット化することだと思います。
ただ、それでも農薬は安全だという説もあれば農薬は危険だという説も出てくるとは思います。
政治的思惑、利権的思惑が消えない限り、それは致し方ないことです。

最後に、私の個人的な考えは…
私ら年代は農薬が安全であろうが危険であろうが今更なので、それよりもこれからの子供達のためには安全か危険かの判断が付かないものはより安全を選択するのが正解かな?と…
ただ、作物によっては現在の栽培技術では無農薬化が難しいモノも多くあります。葉物野菜や根菜などは無農薬、実物野菜や果樹は減農薬、米は特別栽培みたいな感じだと今は一番良いかな?とも思いますが、これは栽培技術側の私の個人的な見解です。

皆さんも、いたずらに農薬を嫌うことなく、過信することなく、どう受け入れ、どう避けていくかを生活スタイルに合わせて考えていってもらえればと思います。
農薬依存がとても高いバラ科の果樹(リンゴや梨、サクランボや梅など)でさえ、今はできるかぎりの減農薬栽培を心がけてくれている慣行農家はたくさんいます。その農家を応援するためにも、農薬の安全性、危険性を0か100かで判断しないことを私は消費者の皆さんにお願いし続けています。
一方で、慣行農家にも消費者に安全性を押しつけない姿勢をお願いしています。農薬は危険であるが故に安全に扱っていることを周知してもらう地道な努力が必要です。

結果として…慣行農家にもオーガニック農家にも付かないあやふやな立場の私は敵視ばかりされています(*^▽^*)