まずは率直にお聞きします。皆さんはこのような勘違いを起こしていませんか?
「有機JAS以外は有機栽培と名乗ってはいけない!」
「有機栽培は化成肥料や農薬を使わない栽培だ!」
これは農水省のサイトに書かれている有機農業の説明です。
私は農水省が「有機栽培」という言葉を使っているかどうかは知りませんが、「有機農業」、「有機農産物」、「有機食品」は原則として有機JAS法に則っています。
ただし、有機JAS対象品目外の農産物や食品、農業は除外されます。
たとえば、食用バラや切りバラは有機JAS対象品目になりますが、バラ苗は有機JAS対象品目ではありません。
「有機JAS以外は有機栽培と名乗ってはいけない!」
これについては大きな誤解があります。
有機JASは農産物という商品の規格ですので、正しくは「有機JASではない農産物の表記に有機など紛らわしい文言を入れてはならない」となります。
ですから、「有機JAS以外は有機栽培と名乗ってはいけない!」は根本的に間違えています。
詳しくは農水省のパンフレットをご覧ください
有機農業・有機農産物とは
有機農業(有機JAS)は農業における農産物の規格です。
有機農業 =化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないことを基本とする
有機農産物=化学的に合成された肥料及び農薬の使用を避けることを基本とする
これにより、「有機栽培は化成肥料や農薬を使わない栽培だ!」と認識されるようになりました。
ところが、有機農業(有機JAS)は特例的に使って良い農薬や化成肥料が追加されています。「基本」と書いてあるからだと思われます。
では、有機栽培はどうなのか?「化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと」はいつどこで誰が決めたのか?
これは後ほど有機栽培の歴史から振り返ってみようと思います。
皆さんには是非とも理解していただきたいことがあります。
それは栽培=農業ではないということです。
有機農業、有機農法、有機農産物、有機食品はすべて農業です。
有機栽培は、農業、家庭菜園、ガーデニングなどの様々な緑化で成されているモノです。
農地の有機JASとベランダの有機栽培は同じでしょうか?
農地と住宅地の安全管理・衛生管理・環境保全は同じですか?
農家への有機JASをガーデニングを愉しむ子どもやお年寄りにも押しつけますか?
住宅地という人工物に囲まれた環境で「化成肥料や農薬を使わない」に固執する必要はありますか?
有機栽培は牛糞や馬糞を使い、肥料には鶏糞が入っていることもあります。住宅地で米糠を撒けば風で飛散します。有用菌だと浮かれていても、住宅地であれば大腸菌などの悪しき菌を意識する衛生管理が必須になります。
庭で生木を使えば、シロアリ発生なんてことにも…
有機JASは農地だけでやりますが、有機栽培は農業、家庭菜園、ガーデニング、公園管理、施設管理、街路樹などでおこないます。
農業の有機JASと家庭菜園やガーデニングの有機栽培は別モノ!
当店は有機JAS対象品目外のバラ苗生産をしていますが、それでも「有機栽培」と名乗っただけで誹謗中傷を受けます。
有機栽培と名乗っても、人工物に囲まれた住宅地の栽培であれば化成肥料の補助的利用も考えますが、これも批判されます。
ですが、有機栽培は現場で活きてこその有機栽培!
大規模農地、スモール農地、大規模農業施設(ハウス栽培)、小規模ハウス、市民農園、住宅の庭、ベランダ、室内…
栽培現場ごとに安全管理・衛生管理・環境保全、そして品質向上を成すための適切な有機栽培があります。
「有機JAS以外は有機栽培と名乗ってはいけない!」
「有機栽培は化成肥料や農薬を使わない栽培だ!」
この勘違いをまずは捨てていただくことから始めていただければと思います。